高基質特異性L-グルタミン酸オキシダーゼから創出したL-アルギニンオキシダーゼの構造解析とL-アルギニン定量への応用A new L-arginine oxidase engineered from L-glutamate oxidase
論文サマリー
Streptomyces sp.由来のL-グルタミン酸オキシダーゼ(LGOX)(EC1.4.3.11)は、L-グルタミン酸(L-Glu)の酸化的脱アミノ化反応を触媒し、2-ケトグルタル酸を生成するアミノ酸オキシダーゼ(LAAO)の一種である。LGOXはL-Gluに対して厳格な基質特異性を示し、また,高い熱安定性やpH安定性も持つことから、旨み成分でもありまた興奮性神経伝達物質でもあるL-Gluの微量定量を行うバイオセンサーとして、医療・食品分野で幅広く利用されている。著者らは、LGOXのX線結晶構造解析に成功し、Arg305が基質認識の鍵残基であること、また、Arg305への変異導入により基質特異性改変酵素が創出できることを明らかにした。創出した変異酵素のR305E変異LGOXはL-アルギニン(L-Arg)に対して高い活性を示すアルギニンオキシダーゼとなっていた。
L-Argはヒトの準必須アミノ酸であり、一酸化窒素(NO)やシトルリン、オルニチンなどの生物学的に重要な生成物の代謝経路に関与している。また、アルギニン血症や癌患者は血中アルギニン濃度が異常に高いことから、医療分野でのバイオマーカーになり得る。そのため、迅速かつ簡便なL-Argの定量のための酵素法の開発が期待されていた。
本論文では、R305E変異LGOXがl-Argに対して厳格な基質特異性を持つことを明らかにし、l-Arg定量への有効性を示した。また、基質複合体結晶の構造解析により、基質特異性が変化した分子機構を明らかにした。
図1にLGOXとR305E変異LGOXの基質特異性の検討結果を示した。R305E変異LGOXはl-Argに対して特異的な活性を示し、元酵素のLGOXと同様極めて厳格な基質特異性を示した、R305E変異LGOXを用い、過酸化水素を定量する4-アミノアンチピリン-TOOS法でのl-Arg濃度の測定を行った結果を図2に示したが、555nmの吸光度とl-Arg濃度の間には、l-Arg濃度が0~100µMの範囲で直線的な関係が見られ、決定係数は0.9993であった。また、l-Arg濃度が0~10µMの低濃度域でも同様な直線性を示しており、本酵素を用いてl-Argの微量定量が可能であった。
年代間の差が夏季に表れていることから、近年の日光を避ける生活スタイルが母乳中ビタミンD濃度に影響している可能性が強く示唆された。オゾンホール発見を契機に1998年には母子健康手帳から日光浴推奨の記述が消え、くる病予防における日光浴の効能やビタミンD栄養の認識低下の要因になったと推測される。本研究結果は公衆衛生上の重要知見であり、母親に対する栄養教育の必要性が強く示唆された。
本研究では、R305E変異LGOXがL-Argに対して厳密な基質特異性を持つことを明らかにした。R305E変異LGOXのL-Argに対する比活性は、天然のPseudomonas由来アルギニンオキシダーゼよりもはるかに高く、また、R305E変異LGOXの熱安定性およびpH安定性は、L-Glu定量に広く用いられている野生型LGOXとほぼ同等であった。これらの特性は、バイオセンサーとしての利用に適している。また、本酵素のL-Argの酸化的脱アミノ化の副産物として過酸化水素が生成するが、これを4アミノアンチピリン-TOOS法によって測定することで、生体資料中の微量なL-Argの濃度測定が可能であることを実証した。これらの結果より、LGOXから創出したアルギニンオキシダーゼはL-Arg定量のバイオセンサーとしての使用に適していることが示された。
グラフィカルサマリー
解説者コメント
解説者が長年研究に携わってきたLGOXは、旨み成分の定量用酵素、脳内神経伝達物質の定量用酵素として世界中で活躍しています。基質特異性が厳格な酵素であり、そのしくみを明らかにできたと同時に基質と認識残基を逆転させることにも成功し、とても感激しました。LGOXから作製したこのアルギニンオキシダーゼもアルギニンの微量定量用酵素として世界中で活躍することを期待しています。