日本ビタミン学会

CYP24A1を阻害することで、がん細胞増殖抑制効果を高める新規DNA アプタマーNovel DNA Aptamer for CYP24A1 Inhibition with Enhanced Antiproliferative Activity in Cancer Cells

著者名(英文):Madhu Biyani, Kaori Yasuda, Yasuhiro Isogai,Yuki Okamoto, Wei Weilin,Noriyuki Kodera, Holger Flechsig, Toshiyuki Sakaki, Miki Nakajima, Manish Biyani
掲載雑誌名ACS Appl Mater Interfaces., 14:18064-18078 (2022), doi: 10.1021/acsami.1c22965.

論文サマリー

ビタミンD3は25‐ヒドロキシD3を経て、1,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D3; 活性型ビタミンD3)へと代謝された後、VDRに結合して生理作用を示す。25D3、1,25D3ともに、CYP24A1により連続的に代謝され不活性化されるが、CYP24A1の過剰発現は、慢性腎臓病、がんとの関連が報告されている。このことから、CYP24A1阻害剤として数種の低分子化合物が報告されているが、現段階で医薬品に至った例はない。そこで、今回、より特異性と親和性の高い阻害剤を目指し、核酸アプタマーの取得を行った。
1018のランダム配列を含む核酸ライブラリーから、ヒトCYP24A1と親和性が高く、かつ、ヒトCYP27B1(活性型ビタミンD3生成酵素)と親和性の低い核酸配列の集団を取得した。得られた多種類の核酸配列を次世代シーケンスにて解析し、配列の出現頻度や2次構造の違いをもとに、候補を11種類に絞り込んだ後、それらのCYP24A1に対する阻害試験を行った。その結果、4種類の配列についてCYP24A1に対する阻害効果がみられた(図1)。その1つであるApt-7は、CYP24A1に対して、CYP27B1よりも5.8倍高い結合親和性を示した。Apt-7の他の酵素に対する阻害を調べたところ、CYP24A1とアミノ酸相同性の高い活性型ビタミンD生成酵素CYP27A1、CYP27B1やステロール代謝酵素CYP11A1に対しては阻害効果がなく、CYP24A1を選択的に阻害することがわかった。
CYP24A1の発現量の高いヒト肺がん由来細胞株(A549細胞)にApt-7を1,25D3とともに添加し、代謝や再増殖抑制効果を調べた。その結果、Apt-7がCYP24A1活性を阻害すること、また、1,25D3単独添加群と比較してApt- 7同時添加群でがん細胞増殖抑制効果が高くなり(図2)、Apt-7が活性型ビタミンD の効果を持続させることがわかった。本研究により取得したApt-7が、CYP24A1を阻害する核酸医薬につながることが期待される。

グラフィックサマリー

図1 Apt-7によるCYP24A1阻害 CYP24A1に対して阻害を示した4種の配列のうち、Apt-7の結果のみを示している

図2 Apt-7添加によるがん細胞増殖抑制効果

図3 Apt-7存在下および非存在下における分子ドッキングシミュレーション(左)と高速原子間力顕微鏡画像(右)

解説者コメント

本論文では、高速原子間力顕微鏡実験、分子ドッキングシミュレーション(図3)、酵素学的試験を基に、Apt-7はCYP24A1結合部位の推測も述べております。この情報を基に、今後、配列の最適化や生体内での安定性向上など、改良を進めていく予定です。

 

 

【その他】大学プレスリリースリンク先
https://www.pu-toyama.ac.jp/press_releases/2022/06/03/13753/
https://nanolsi.kanazawa-u.ac.jp/en/highlights/22346/

 

解説者:安田 佳織(富山県立大学工学部医薬品工学科)

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